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難病の1つ、関節弛緩を伴う脊椎骨端骨幹端異形成症2型の責任遺伝子KIF22の機能を解明【 分子情報生化学分野 川上 紘佳 大学院生,松原 琢磨 准教授,古株 彰一郎 教授 】


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難病の1つ、関節弛緩を伴う脊椎骨端骨幹端異形成症2型の責任遺伝子KIF22の機能を解明
分子情報生化学分野
川上 紘佳 大学院生,松原 琢磨 准教授,古株 彰一郎 教授

研究内容
 成長関節弛緩を伴う脊椎骨端骨幹端異形成症2型(SEMDJL2)は低身長、四肢の低成長、顎顔面の形態異常、脱臼しやすい関節などの症状を有します。SEMDJL2患者ではキネシンファミリータンパク質(※1)、KIF22遺伝子の変異を認めることからKIF22の機能がSEMDJL2の病態に関わるのではないかと考えられていましたが、これまでその関連は解明されていませんでした。
 KIF22の機能を喪失した遺伝子変異モデルマウスを作製し解析したところ、脛骨の成長板(※2)が薄く、骨全体が短くなっていました。そこで、軟骨細胞を採取し解析すると、KIF22変異マウス由来の軟骨細胞では、細胞分裂する際に出現する紡錘体(※3)がうまく形成されませんでした。その結果、KIF22変異マウス由来の軟骨細胞の増殖速度は遺伝子変異がないマウス由来の軟骨細胞に比べ遅くなっていました。また、軟骨細胞の前駆細胞株ATDC5細胞(※4)に、SEMDJL2患者と同じKIF22の遺伝子変異を導入すると、やはり紡錘体の形成が起こらず細胞増殖が遅くなりました。これらの結果から、SEMDJL2患者ではKIF22の遺伝子が変異し軟骨細胞の分裂に必須である紡錘体が正常に形成されず、細胞分裂が遅くなり、結果として骨の伸長が妨げられ、低身長などの病態を呈すると考えられます。(図)。
 本研究は、SEMDJL2の治療法開発に貢献できるだけでなく、KIF22が増殖を制御することから軟骨をターゲットとした再生医療への展開が期待できると考えております。

用語説明
※1 キネシンファミリータンパク質:細胞内でDNAやタンパク質などの輸送を担うタンパク質の一群。
※2 成長板:骨の末端近くにある軟骨でできた構造で、骨が伸びるためには成長板が厚くなる必要がある。
※3 紡錘体:細胞分裂の際に染色体DNAを両極に均等に引き分けるための装置。
※4 軟骨の前駆細胞株:軟骨細胞になる直前の性質を保ったまま無限に培養できる細胞。ATDC5は細胞株の名称。

研究者からのコメント
SEMDJL2の患者様からKIF22の遺伝子変異が発見?報告されてから10年以上、KIF22がなぜ疾患の原因となっているか論文報告がありませんでした。その謎に、いざ挑戦してみると、細胞増殖にかかわる遺伝子の研究の難しさに突き当たりました。その壁を共同研究者全員で一体となり工夫で乗り越えるのが研究の楽しさだと思います。これを読んで興味を持ってもらえれば幸いです。

論文情報
題名:KIF22 regulates mitosis and proliferation of chondrocyte cells.
著者:Hiroka Kawaue, Takuma Matsubara, Kenichi Nagano, Aoi Ikedo, Thira Rojasawasthien, Anna Yoshimura, Chihiro Nakatomi, Yuuki Imai, Yoshimitsu Kakuta, William N. Addison, Shoichiro Kokabu
論文雑誌:iScience誌 2024 年5 月29 日発刊
DOI:https://doi.org/10.1016/j.isci.2024.110151
Pubmed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38989461/

研究者情報
松原琢磨
researchmap: https://researchmap.jp/matsubara12345
ORCID: https://orcid.org/0000-0002-8505-0431
古株彰一郎
researchmap: https://researchmap.jp/read0134704
ORCID: https://orcid.org/0000-0002-6663-4327

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