糖鎖を用いた免疫応答や骨代謝の制御に成功【 感染分子生物学分野 有吉 渉 教授 】
糖鎖を用いた免疫応答や骨代謝の制御に成功
感染分子生物学分野
有吉 渉 教授
研究内容
生体の「第3の生命鎖」といわれる糖鎖は、さまざまな疾患の成因に関わることが明らかとなり、医学や歯学への貢献が期待されています。本研究では、真菌、細菌、藻類、植物などに広く存在する糖鎖であるβ-glucanの生物活性を解明するための実験に取り組みました。その結果β-glucanが、免疫細胞や破骨細胞の細胞膜上に発現している免疫受容体であるdectin-1との結合を介して、炎症反応を抑制するサイトカインであるIL-10の産生を亢進すること、および破骨細胞の分化や骨吸収活性を抑制することを明らかにしました。今回、得られたβ-glucanの炎症応答や破骨細胞分化の抑制作用は、炎症や骨破壊が関わるさまざまな疾患の治療への応用が期待されます。
これらの研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業基盤研究(C)18K09797および基盤研究(B)21H03145の一環で行われ、その成果は、2021年2月1日に「Carbohydrate Polymers」、2021年4月21日に「Biomedicines」、2021年7月1日に「Journal of Cellular Physiology」に掲載されました。
用語説明
破骨細胞:骨のリモデリングにおいて、骨を破壊(骨吸収)する役割を担う多核巨細胞
免疫受容体:免疫細胞に存在し、特異的な物質と結合して免疫反応を制御するタンパク質
サイトカイン:免疫細胞をはじめ、さまざまな細胞で合成?分泌される小分子タンパク質
研究者からのコメント
糖鎖は、他の生命鎖である核酸やタンパク質と比較して、立体構造が複雑で取り扱いが難しく、解明すべき課題が多く残されています。そのため、糖鎖研究の発展には、物理学、化学などとの融合が求められています。実際、本研究には本学だけでなく、他大学の工学部や薬学部の教員や大学院生も参画しました。こうしたコラボレーション研究に興味のある方は、われわれと一緒に取り組んでみませんか?
論文?研究者情報
PubMed : https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33305824/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33915775/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33305824/
ORCID : https://orcid.org/my-orcid?orcid=0000-0002-6533-5683
researchmap : https://researchmap.jp/read0071443