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高齢者の発熱と臼歯の咬合状態との関連を解明 【 口腔保健学科 泉 繭依 講師 】


01izumi2.jpg高齢者の発熱と臼歯の咬合状態との関連を解明
口腔保健学科
泉 繭依 講師



研究内容
 この研究は、高齢者施設の入居者における臼歯の咬合支持の状態と発熱との関連を調査するために行われました。発熱は高齢者でよく認められる症状で、本人だけでなく、介護者の負担となっています。高齢者の発熱の多くは誤嚥性肺炎と関連があり、口腔衛生状態と誤嚥性肺炎との関連はよく知られていますが、発熱と口腔機能との関連についてはいまだ不明な点がありました。そこで我々は、北九州市の10施設に住む65歳以上の141人を対象とし、総機能歯数(total Functional Tooth Unit; tFTU)を用いて咬合支持の状態を評価し、37.2°C以上の発熱した人数を8か月間追跡調査しました。その結果、53人が発熱し、tFTUが12の参加者はtFTUが0もしくは1-11の参加者と比べて、平均発熱日数が有意に少ないことがわかりました。また、tFTUスコアが0の参加者は、スコアが12の参加者に比べて発熱リスクが3.2倍高いことが分かりました。これらのことから、臼歯部の咬合支持を維持することで高齢者の発熱のリスク低減できる可能性が示唆されました。
 この研究は2022年7月に「Gerodontology」に掲載されました。この論文は老年歯科医学会のLion Award(優秀奨励論文賞)を受賞しました。

用語説明
 総機能歯数(total Functional Tooth Unit; tFTU):臼歯部の咬合状態について、現在歯、固定性補綴物、可撤性補綴物を含めたすべての咬合を評価します。小臼歯の咬合は1点、大臼歯の咬合は2点と評価し、最大12点となります。
誤嚥性肺炎:食べ物や唾液が気管に入ると咳反射により排出しますが、老化などによりこの機能が低下すると、肺に食べ物や唾液が入り込み(誤嚥)、付着していた細菌などにより肺炎がおこります。

研究者からのコメント
 高齢者が増加していく中で多職種が連携して要介護状態になる前に対策を行い、健康寿命をいかに延伸するかが課題となっています。本研究は、未病の段階で歯科が介入する意義として、機能している歯の数が低い人は早期に歯科受診につなげてもらうことで将来の発熱を防ぐことが可能となることを明らかにした初めての論文といえます。他職種に口腔の健康の重要性、臼歯の咬合関係を確認することの重要性を周知する契機にもなりました。

論文?研究者情報
PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33749006/
ORCID: https://orcid.org/0000-0001-7325-9708
researchmap: https://researchmap.jp/remon1126


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